絹人往来

絹人往来

養蚕体験 思いやりの心育てる 七五三木真理子さん(45) 沼田市坊新田町 掲載日:2008/03/11


出来上がったスイセンを手にする3年生と七五三木さん
出来上がったスイセンを手にする
3年生と七五三木さん

 「毎日、大切に蚕の世話をしたことで、子供たちは命の大切さを感じてくれたと思う」
 担任をしているみなかみ月夜野北小学校の3年生11人と昨年夏、養蚕体験をした。生き物を育てることで人を思いやる心を育ててほしいと、町内の養蚕農家、石坂義久さんが提供してくれた蚕100匹を飼育した。3年生全員で3カ月間当番を決めて、桑くれや飼育箱の掃除をした。
 「最初は嫌がっていた子も少しずつ蚕に触れられるようになった。最後には冷たくて気持ちいいと、手のひらで遊ぶ子もいた。休みの時は家に持ち帰って世話をしたが、家族は蚕の様子を楽しげに見てくれた」
 養蚕体験は地域住民の協力が大きかった。石坂さんは、飼育マニュアルを作成し、繭ができる時期やタイミングの見分け方を分かりやすく教えてくれた。養蚕をしていた農家からは、繭づくりに欠かせない蔟(まぶし)を貸し出してもらった。蚕もすくすく成長し、繭百個を収穫することができた。
 「蚕を飼うのは初めてだったが、皆さんのおかげで思ったより簡単に世話ができた。貴重な体験となり、私も子供たちも大変勉強になった」
 3年生は、朝の運動の時間に一輪車や竹馬の乗り方を教えてくれた6年生10人に感謝の気持ちを伝えたいと、収穫した繭を使って繭クラフトに挑戦。卒業の季節に合わせてスイセンの造花を作り、記念品として贈ることにした。
 「近所の手芸店や繭クラフト作りに詳しい教頭先生から作り方を教わったが、3年生の子供たちに細かい作業ができるか心配だった」と明かす。
 「意外と難しい」「うまくできてるかな」。子供たちは先生の手を借りながら、真剣な表情で約1時間半、作業を続けた。緑の色紙を葉の形に丁寧に切り取り、真っ白な繭を色づけすると、かわいらしいスイセンの花に仕上がった。「花びらを付けると本物の花のようで面白かった。6年生に喜んでほしいな」と布川裕一君(9)はほほ笑む。
 「とてもきれいにできて、子供たちは満足そうだった。作るのを楽しんでくれたので、みんなで苦労して育てたかいがあった。今年もぜひ体験してみたい」

(沼田支局 田島孝朗)