原点 織都の染色技術に感動 笠原奈央子さん(25) 桐生市東 掲載日:2007/07/17
ものづくりの原点を求めて染色工場で働く笠原さん
留学先のフランス・パリで「桐生」と出合った。静岡県出身。地元の高校を卒業し、スタイリストを目指して留学した。服飾の専門学校で学ぶかたわら舞台の衣装係を務めていたとき知り合った女性パフォーマーが桐生出身だった。
「帰国した後、ものづくりをしたいという希望はあったけれど、職場が見つからなかった。彼女が桐生に帰省するというので、軽い気持ちで同行、ここに住みたいと決めてしまった」
初めて聞く織機の音、織都の風情を残すのこぎり屋根、職人から感じ取った誇り。かつて織物で繁栄した街のにおいを感じた。桐生市本町の天然染色研究所を訪れた際、色とりどりに染められた糸が印象に残った。ここで働きながら、ものづくりがしたいと強く思った。
「高校時代、人から変わった子と見られ、受け入れてもらえないことに悩んでいた。そんな時、フランスのデザイナーのワンピースを着た自分を見て、かわいいなと素直に自分を受け入れられた。洋服の力を感じた」
服への思い入れからスタイリストの夢を抱いた。だが、服飾を学ぶほどにものづくりの原点に目がいった。思い通りの色を出すことの難しさ、服作りに伴う不用な布の再利用。突き詰めていくうちに、出来上がった服を扱う仕事より、服作りに興味がわいた。
「服を作るということはスカート1枚でも大変なこと。専門学校で身に染みて分かった。桐生は生活、文化の中にものづくりがあって、それが人と風土を形作ってきた」
昨年3月から、染色加工を行う土田産業(同市新宿)に勤務。染色課に所属し、機械で天然素材を染色する仕事を担当している。
「3原色から生まれるさまざまな色に、無限の世界を感じている。日々の仕事は繰り返しでも、色の表情は毎日違う。だからおもしろいし、飽きない」
現在は仕事の合間に、端切れを使った草履やマフラー、服などを制作。展示会や衣装の提供なども行っている。
「自分の作ったものを通して伝えたいメッセージがある。服作りで余った布を利用した作品を通して、ものには作る過程があることを知ってほしい。私が感じる美しさ、作品に共感してもらいたい」