草木染 思いがけない色楽しむ 村田 俊さん(78) 中之条町中之条 掲載日:2008/05/29
草木染の作品を手にする村田さん
マリーゴールドやヨモギ、クズなど身近な花や山野草の葉などから染料を煮出し、繊維に色を着ける、伝統の草木染に取り組む。
「奈良時代には既に存在していたという素朴な染色。現代でも一般の人が比較的見る機会がある古い草木染として、享保びなと呼ばれる江戸時代のおひなさまがはいている緋色(ひいろ)のはかまがある。多くは退色して黄色になってしまっているが、当初はベニバナの鮮やかな紅色だったはず」
茶道をたしなむが、ある茶席での体験が草木染にかかわるきっかけになった。
「茶席に並んでいたら、手あぶりと呼ばれる火鉢の下に敷かれていた小さな座布団の落ち着いた色合いにすっかり魅了されてしまった。茶席を終え、座布団の縫い代をめくってみると、ほとんど退色していない染色したばかりのような色合いも残されていた」
「この染色を自分でも手掛けてみたい」と思っていた。1985年、町の文化講座の1つ「草木染」に参加した。基本的な技術を習得し、身近な花や木を使って染色を試みた。
「草木染はタンパク質を多く含んだ布地によく染まり、退色も少ない。シルクは最適な素材の1つ。さまざまな染材料で染色を試みているうちに思いがけない色が次々に出現し、驚かされる」
今年はモモの花びらに挑戦した。花びらを煮出すと、赤ワインのような液になったが、絹地に染めると鮮やかなグリーンに。
「いつも天気に左右される難しさがついて回る。花びらや木の皮は3日間も雨が続くと、水分を多く含むようになり、仕上がりがぱっとしない」
生地に化学繊維の糸や材料が混じっていたりすると、色がのらなかったり、染め残りができることもあるという。
「染色は楽しい。でも残念ながら、満足と思える作品はまだできていない。この次には、よりよい物を作りたい。反物を染め上げ、満足できる着物を仕立てたい」
中之条町草木染の会(会員8人)の会長でもある。互いに経験を重ね、来年開催予定の展示会に向け張り切っている。