絹人往来

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養蚕振興 2人3脚で、よい繭を 武者 行尚さん(70) 藤岡市藤岡 掲載日:2007/08/23


二人三脚で育てた出荷前の繭を前にして笑顔を浮かべる武者さん(左)と妻のスミさん
二人三脚で育てた出荷前の繭を前にして笑顔を浮かべる武者さん(左)と妻のスミさん

 養蚕振興を目指す多野藤岡農協養蚕部会に所属し、10年ほど前からは藤岡地区代表を務めている。飼育の開始時期や繭の出荷時期などを取り決める会議に出席し、地域における養蚕の活性化にも力を注いでいる。
 昨年からは監査役に就任。年に1回ある役員の研修会では、碓氷製糸農業協同組合や旧官営富岡製糸場を見学するなどして養蚕に対する思いを強めている。
 養蚕時期が近くなると、蚕の注文票を地域の農家に配布。蚕の入荷時には、地元のほかの農家分の蚕もトラックに積んで配っている。
 以前はどの農家も養蚕をしていたが、地域で今でも続けているのは4世帯。
 「養蚕を辞めた人は楽になったと言うが、辞めようと思うことはほとんどない。いい繭が取れた時が魅力的だから」
 自宅にある飼育場所の空気の換気や蚕が病気にならないように消毒をしたり、暖かい時には夜でも桑を与えるなど努力を惜しまない。
 繭になってからは、日にさらして乾かし、最後に繭の毛羽(けば)を落とす繭かきを行い、袋に入れて出荷する。
 「蚕は手間暇かかるが、真っ白い繭ができた時は何よりもうれしい」
 年3回、蚕を育てているが、妻のスミさん(69)と2人3脚だ。
 「1人では養蚕はやっていけない。たまにけんかする時もあるが、2人でやっているから今でも続けられている」
 妻としても養蚕を続ける上でも欠かすことのできない存在のスミさんも養蚕農家出身。スミさんは「お蚕は大きくなっていくのが分かってかわいい」と子供を育てるような思いを込めて育てている。
 地元の養蚕農家が次々と辞めていき、若い世代が養蚕を始めることも難しい情勢だが、継続への意欲は衰えない。
 「大変なこともあるが、夫婦で今までやってきた。できればもっとたくさん作りたい気持ちもある。やっぱり蚕を育てるのは好きなんだなあ」

(藤岡支局 林哲也)