絹人往来

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繭クラフト 加工や染め独学で習得 入内島 礼子さん(59)  渋川市半田 掲載日:2008/11/28


繭クラフトやシルク絵の創作と指導に打ち込んでいる入内島さん
繭クラフトやシルク絵の創作と指導に打ち込んでいる入内島さん

 絹の端布で作ったかわいらしい金魚の飾りや、一見すると盆栽に見える繭(まゆ)クラフト、写真のフレームを利用した立体的なシルク絵。繭に魅せられて創作に取り組み、20年ほど前からは自宅で教室を始めた。生徒数は県外在住も含めて50人に上る。
 「サラリーマンの家庭に育ち、養蚕農家の次男の夫と結婚するまで蚕とは無縁だった。結婚後に夫の実家で養蚕を手伝っていた時、義姉が繭クラフトで作った赤いバラを見せてくれた。白い繭を染めてこうした作品ができると知り、感激して自分でも作り始めた」
 当時は参考になる本はわずかで、繭の加工や染め方などすべて独学で習得した。
 「染めが1番難しかった。繭を染料に漬けても表面にしか色が着かなかった。苦慮した末、1度洗濯して繭のにかわ質を取り除く方法を考え付いた」
 今も教室や自分で使う素材は自身で染めており、完成に二日かかるという。
 「負担はあるが、イメージした色に仕上がった時の喜びは大きい。昔から草花や樹木の作品を手掛けているが、繭でしか出せない色が魅力だと思う」
 鉢や皿の上に置く作品の細部にもこだわりを持っている。創作の参考にする写真だけでは立体感をうまくつかみきれないため、何度も公園などに足を運んで実物を観察、頭に刷り込むという。
 「最近は、写真用フレームに加工した繭をちぎり絵のように置くシルク絵を教室で始めた。厚さ二センチほどで十分に立体感が出せる。花火やアジサイなど季節感のある作品が手軽に作れるので、自分でも熱中している」
 繭クラフトは繭を何層にも薄くはぎ、はさみで細かい切れ目を入れ、ワイヤフレームを使って花びらの膨らみなどを表現する。繊細な作業の連続だが、すいすいと手が動く。
 「絵が苦手なので、同じものをスケッチしろと言われてもできない。繭との出合いがあったから、教室や地域のいきいきサロンなどで違う世代と交流を持つこともできた。今後も繭を通じてはぐくんできた関係を大事にしていきたい」

(渋川支局 田中暁)