絹人往来

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着物リメーク 「思い出」に命吹き込む 戸沢 英子さん 玉村町上茂木 掲載日:2008/05/15


「和と洋の融合で新たなファッションに展開させていきたい」と話す戸沢さん
「和と洋の融合で新たなファッションに展開させていきたい」と話す
戸沢さん

 「着なくなったままになっている着物を、新たなファッションに展開させていきたい」
 玉村町の自宅で、着物のリメークを手掛けている。普段着るワンピースやスカートのほか、4、50年前の花嫁が着た打ち掛けを使ったウエディングドレス、ダンス衣装など幅広く創作活動をしている。
 「眠っている着物にもう1度、命を吹き込む」と思いを語る。
 養蚕農家で生まれ育ち、両親と祖父母が蚕を大切に育てている姿を近くで見てきた。
 「家族だけでは手が足りないほど忙しく、家の中も蚕でいっぱいで人間が小さくなって寝ていた。子供のころは、蚕の口から糸が出るのが不思議でしょうがなかった」
 数年前に本県の養蚕の歴史を調べ、知れば知るほど、その繁栄ぶりに驚いた。
 「すごく強い衝撃を受け、鳥肌が立つ思いがした。養蚕農家で育ったにもかかわらず、こんなにも輝かしい歴史に目を向けなかったことを恥ずかしく思った」
 18歳のとき祖母に買ってもらい、長い間しまったままになっていた着物を10数年前、スーツに縫い直したことをきっかけに、着物のリメークに興味を持つようになった。「売っていないものを着る喜びを感じ、祖母との思い出がよみがえった」と振り返る。
 子供のころから洋裁が好きで、埼玉県本庄市でオーダーブティックを営んでいた。両親の介護で自宅に戻り、離れた時期もあったが、2年ほど前から本格的に着物リメークの仕事に携わるようになった。
 着物には1点1点それぞれに、先人たちの思いが詰まっていると感じている。
 「時代を超えて残っている布は貴重。先人たちの思いを何らかの形で残したい。形を変えてもその思いは残る」
 絹の歴史を学ぶにつれて、何とかもう1度盛り上げたいという気持ちが強くなるという。
 「この仕事はやればやるほど魅力が増し、良いものを仕上げたいと思うようになる。これからも布との対話を繰り返して良さを引き出し、世界に1点しかないものを作り上げたい」

(伊勢崎支局 伊草実奈)