絹人往来

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ちりめん人形 気持ち和む作品追求 富沢 典子さん(59) 高崎市中豊岡町 掲載日:2008/07/17


ちりめん人形作りに情熱を注ぐ富沢さん
ちりめん人形作りに情熱を注ぐ
富沢さん

 人形作家、竹本京さんの下で、主婦業の傍ら10年ほど前からちりめん人形作りに励んでいる。高崎市中居町の工房に通う門下生30人余りの中で、最も創作歴が長い。
 「ちりめんの風合いは柔らかな表情を表現できる。発泡スチロールと粘土で型を作ってから布を張って筆を入れるが、人形はやはり顔が命。技術はまだまだ未熟だけれど、自分で思っていた以上にかわいくできると本当に楽しくなる」
 亡くなった母親(つね代さん)の持ち物を整理していて数多くの絹の端布が見つかり、それで何か作れたらというのが創作のきっかけだった。
 「古い着物に使われたちりめんで人形を作っていると、この着物はどんな時に着ていたのだろうかとか、いろいろな思いが膨らんで夢中になってしまう。最近はちりめんがブームで、江戸時代の柄が人形に最適と言われる。これまで昔の物はただ汚いと思っていたが、人形を作るようになって見方が変わった。昔の物の良さが発見できるようになった」
 自宅にはひな祭り、七夕などの季節に応じて自作のちりめん人形が飾られる。その中の一つ「焼きいも」は、ほうきを手にした母親とたき火を見守る姉妹で構成され、ほのぼのとした愛情がにじむ。
 「粘土を乾かす期間も含め、完成までに三カ月かかった。懐かしさが込み上げてくるような人形を作りたかった。厳しさを表現する作品があってもいいが、私としては見る人の気持ちが和む人形にしたい」
 高崎市の県立日本絹の里で14日まで、竹本さんと門下生の作品を集めた「ちりめん創作人形展」が開かれた。会場の案内役を務め、訪れた人から直接、感想を聞く機会も多かった。
 「気持ちが穏やかになったとか、安らぎをもらったという声が寄せられ、作り手としてうれしい。先生との力の差はとても大きく、そうした厳しい指摘もいただいた」
 門下生7人のグループで、11月に初の作品展を開く。「もう開いてもいいと先生に言われた。ぜひ良い展示会にしたいと皆で張り切っている。懐かしさを感じてもらえる作品を出品したい」

(高崎支社 関口雅弘)