ちりめん細工 ものづくりの心伝承 星野 睦子さん(51) 前橋市日吉町 掲載日:2008/02/08
「作品を通して古き良きものを伝えていきたい」と話す星野さん
テーブルの上に置かれたつり雛(びな)や人形、お筥(はこ)、押し絵から独特な和の風合いがにじみ出る。織物の表面に細やかな皺(しぼ)があるちりめん。小さな残り布を縫い合わせてつくるちりめん細工は江戸時代からの歴史を持つ。
西洋のビスクドールを習っていた教室で、知り合いから伝承細工の1つにちりめん細工があることを聞かされ、作品や作り方が載った本を見せてもらったのが、ちりめん細工との出合い。
「昭和の終わりごろでしょうか。古くから伝わってきたちりめん細工を作って見せたいという思いにかられた。絶版になっていた本をコピーさせてもらい、ちりめんを集め、すぐに作り始めました」
日本女性が生み出し、教養の1つだった伝統手芸も戦後の混乱や生活様式の変化で一時廃れたが、「柳川さげもん」(福岡)を伝承したり、伊豆稲取(静岡)でつり雛が町おこしを担うなどブームに。1990年ごろから各地で作品の展示会や講習会も開かれるようになった。
「どんな簡単な作品でもきれいに仕上げる難しさがある。立体的になればなるほど、谷と山を合わせたカーブでかわいらしさを表現した昔の人の技に感心する」
ちりめんを縫う一針一針に込めた思いと、素材のやさしい感触が融和する。出来上がった作品を発表したところ、「教えてほしい」という声が寄せられた。7年ほど前に教室を開き、現在3つの教室で26人を指導している。
「つり雛には、寿命が50年といわれた時代に1歳でも長生きできるようにと決まった数の縁起物を飾ったいわれやこだわりがある。作品を作る上では、そういった昔の人が抱いた気持ちを守りながら、新しい、いいものは取り込んでいきたい」
作り伝えなければならない古き良きもの。今後は、五節句のなかの七夕や重陽を表現したいという。
「作るだけでなく、心が入っているのがものづくり。だからこそ、もらった人も作ってくれた人の思いを受け取って大事にして懐かしんだりしてほしい。ちりめんを着ていた時代に、ほころんだら繕い、着なくなったら長じゅばんにしたように、作品からものを大切にする気持ちも伝えたい」