絹人往来

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東京手描き友禅 つやのある色に感動 堀田 順子さん(61) 前橋市上新田町 掲載日:2007/10/17


1つ1つの作品に愛着があると語る堀田さん
1つ1つの作品に愛着があると語る
堀田さん

 自宅の居間に飾られた友禅染の作品。落ち着いた雰囲気を醸し出し、目を引く。地味な中にも明るい色調と斬新なデザインが特徴の東京手描き友禅だ。
 「10年ほど前から手描き友禅を始めた。夫の転勤で前橋から東京へ引っ越したのがきっかけ。近くで伝統工芸教室が開かれているのを知り、友禅染を学びながら、手描きで自分らしさを表現してみようと思った」
 最初は思うようにいかず、友禅染の難しさを実感した。しかし、かえってチャレンジ精神がわいてきて、徐々にやりがいを感じるようになったという。
 「特に難しかったのは、色の混ざり合いを防ぐため、ゴムのりを下絵の線の上に置く糸目取り。しっかりとした糸目が取れるまでに2、3年かかった。仕上がった作品の、絹を染めた何とも言えないつやのある色にすごく感動した」
 当時の講師には今でも感謝している。伝統を守ろうとする風潮が強い中、自由な発想で描く絵を許し、色でもデザインでも個性を認めてくれた。
 3年後に夫の転勤で再び前橋に戻ったが、東京へ週1回通い、友禅染を学び続けた。
 「本当に奥が深い。でも、やればやるほどおもしろい。絹本来の美しい白を生かして表現するのがポイント。世界にたった1つの作品が仕上がった時は、これ以上ないくらいの喜び」
 初孫のお宮参りのために作った着物を最後に、この2年間は友禅染の作品を作っていない。
 「なんだか自分の作品に満足しちゃって。居間にいるとじっと作品に見入ってしまう。今は休んでいるけれど、将来は外国の風景を友禅染で表現してみたい。静かでほっとできるような絵。そして、できることならいつか個展も開いてみたい」
(中沢康治)