絹人往来

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着物貸し出し 地域住民の冠婚葬祭に 飯塚かつみさん(73) 太田市由良町 掲載日:2008/08/27


公民館で開いた衣装展示会で、江戸褄を披露する飯塚さん
公民館で開いた衣装展示会で、
江戸褄を披露する飯塚さん

 江戸褄(づま)や喪服などの和装を地域住民に格安で貸し出す「宝泉あゆみの会」の会長を務める。太田市宝泉公民館を拠点に、主婦ら10人で衣装の保管や手入れを行っている。
 「以前より貸し出しは減ったが、急な法事など今でも必要とする人は多い。地域の役に立てるようできる限り続けたい」と意気込む。
 50年前に旧尾島町の市街地から嫁いできた。「嫁ぎ先は養蚕のほか、絹織物や縫製を手掛けていた。桑畑に囲まれ近所に織物をやっている家も多かった。和装が好きで自分でも着物を縫ったりしていたが、絹産業を一層身近に感じた」
 宝泉公民館設立とともに1961年、宝泉婦人会が発足。地域住民を対象に婚礼用の衣装など着物の貸し出しを始めた。
 「当時は公民館で挙式や披露宴を開くことが多く非常に忙しかった。ほぼ毎日のように問い合わせがあった。着付けの心得もあったので婚礼当日の着付けも手伝った」
 婦人会は2004年に解散。着物を活用しようと「あゆみの会」を有志で結成し貸し出しを続ける。現在60着ほどが公民館に保管してある。
 「冠婚葬祭のほか、邦楽や踊りの団体が発表会で着たいと借りに来ることもある。若い人は和装に触れる機会が少ないので、柄と帯の組み合わせ方など教えてあげると喜ばれる」
 貸し出しの収益は着物の更新や修繕に使う。
 「江戸褄の柄にも流行があるので、すでに持っている方も子供の結婚式に最近のものを着ていきたいと訪れる。新郎、新婦の母親には是非いい着物を着ていただきたい」
 古くなった着物や帯は捨てずに活用する。公民館で古着を使った手芸教室も開いている。
 「着物は柄の部分を生かして、鏡台のカバーなどに使える。帯は切って人形や羽子板の素材にする。牛乳パックで作ったいすや踏み台に帯地を張るだけで見栄えがする。やり始めると夢中になって午前1時、2時になってしまうことがある」
 貸し出す着物の手入れは交代で行う。
 「自分の着物と同じような気持ちで手入れしている。借りる方に『きちんと保管してますね』と言われると励みになる」

(太田支社 正田哲雄)