着物リフォーム 新しい命吹き込む 清水 房子さん(63) 高崎市井出町 掲載日:2007/08/30
1日に1回は糸と針を手にする」と話す清水さん
羽二重の着物はブラウス、羽織はボレロ、端切れはきんちゃく袋、黒の喪服は約2センチ幅のテープ状にして編み込みバッグ…。手を動かしていると、次々と発想が浮かんでくる。
10年ほど前、子育てが一段落したのを機に、着物のリフォームやちりめん細工を始めた。高崎市下小鳥町で夫の文男さん(67)と営む手焼きせんべい店の1角、1畳ほどのスペースが作業場だ。
「店があると、習い事に出掛けるわけにもいかないし、身近で楽しめることを考えた。母や姉にもらった古い着物や、若いころに着た着物を無駄にしたくなかった。シルクは肌触りがいいし、昔の生地は質がいい。手を動かすならパッチワークもあるけれど、小さく切るのはもったいない気がした。着物の柄を生かしたかった」
小学生のときから縫い物は苦にならなかった。着物を縫う母親のそばで端切れをもらい、見よう見まねで人形や着せ替え用の服を縫った。場所を取らない刺し子だけは、結婚後も続けた。
「作品づくりはすべて自己流。書店で見た雑誌やウインドーショッピングからアイデアが浮かび、自分でデザインする。型紙も図案も描かず、頭の中のイメージに沿って手を動かす。マニュアルがないから、どれも1品もの。帯地でアップリケにしたり、刺しゅうで飾ったり、自分の発想が形になっていくのが楽しい。手縫いは生地を傷めず、いい風合いに仕上がるの」
作品を店内に飾ると、客から「譲って」とせがまれ、自分で縫った服を着る機会はなかなかないが、それも喜びの1つ。写真館に勤める姉に頼まれ、ひな祭りや七夕、月見など、季節に合ったディスプレー用のちりめん細工も手掛ける。
「何でも身の回りのもので作るけど、刺し子糸だけは、色落ちしない糸を求めて岐阜・高山まで出掛ける。縫い物をしていると、もっと違うもの、もっと高度なものをつくりたいと思う」
豊かな発想と確実な手仕事で、生まれ変わった数々の着物たち。新しい命を吹き込まれ、作者と同じように生き生きとしている。