組みひも 複雑な柄も自由に 田中 芳子さん(73) 高崎市八千代町 掲載日:2007/11/29
「組み方が何通りもあって、習うのに終わりが無い」と組みひもの魅力を語る田中さん
「さまざまな習い事をしたが、組みひもが1番奥が深い。組み方が何通りもあって、習うのに終わりがない」
絹や綿の糸を何本も組み合わせて編み上げ、さまざまな模様のひもを作り上げる伝統工芸「組みひも」。魅せられて20年以上になる。
中心に穴が空いた「丸台」や、100本以上の糸を掛けることができる「高台」と呼ばれる道具を使い、少しずつ丁寧に組み上げる。できたひもは着物の帯締めをはじめ、首飾りや携帯のストラップなど、使い道はさまざま。ベルトやネクタイも作ることができる。
「用途によって糸の詰め具合を弱くしたり、きつくして調節している。組み方しだいで表と裏の模様を変えたり、複雑な柄も自由にできる」
使用するのはもっぱら絹糸。「化学繊維だと緩みやすい。絹糸は伸縮するのでしっかり締まってほどけない。感触や光沢も良い」と魅力を語る。
1934年、高崎市生まれ。高崎女子高校を卒業後、東京の短大で栄養学を専攻、県内で家庭科などの教員として勤めた。50歳のころに教員を辞め、自宅から都内の装道創芸学院に通い、組みひもや着付けを習った。初めの5年間は週5回、現在でも月に2回ほど通っている。
「子供のころから華道や茶道を習い、着物に親しんでいた。20歳から数年間、着付けを学んだことが忘れられなかった」と、同学院に通い始めた理由を話す。
とりわけ奥深さを感じた組みひもにのめり込み、今まで数え切れない作品を作った。「自分の作品をもらって、喜んでくれるのがうれしい」と、帯締めのひもなどを近所の人にあげている。
「周囲から『教室や店を開かないの』とよく聞かれるが、店を出すなんておこがましい。まだまだ習得することがたくさんある」。自分のペースで好きな時にできる組みひもが気に入っている。
着付けや華道、鎌倉彫と多彩な芸術活動に取り組んでいるが、「組みひもは頭の体操にもなり、疲れても途中で止められるから自分に合っている」。好きなものを好きな時間に飽きるまで作り続ける。創作を心から楽しんでいる。