絹人往来

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繭クラフト 大手術で心の支えに 須永 シズ子さん(76) みどり市大間々町浅原 掲載日:2007/10/24


グランプリに輝いた「孔雀」を前に繭クラフトの魅力を
グランプリに輝いた「孔雀」を前に
繭クラフトの魅力を

 床の間に特注のケースで飾られた「孔雀(くじゃく)」。繭を繊細に重ね合わせ鮮やかな色彩を放つ。本年度繭クラフトグランプリに輝いた作品だ。これまでの最高傑作であるとともに、命を救った“特効薬”でもあった。
 「吉報が届いたのは動脈瘤(りゅう)手術の30分前。あまりのうれしさに不安は吹き飛び、浮き浮きして手術室に運ばれました」
 前夜、県から受賞の電話が自宅に入り、夫が翌日午前8時に駆けつけて伝えた。
 「これで手術も大丈夫だと思い、安心して臨めました。4時間に及んだ大手術を乗り越えた」
 作品は、昨年9月から3カ月かけて製作した。
 「前の年、横浜での展示会を見た帰り、今度は孔雀を作りたいとの思いが頭をよぎった」
 真っ白い繭を染め、はさみではぎって形を作る。さらに色を塗ったり、切り口を補正し、最後に霧吹きで整えて仕上げた。
 「同じ色調にするため、染めるのは一時にする。このため廊下と8畳間を独占して作業した」
 繭クラフトを始めたのは20年ほど前。旧大間々農協養蚕婦人部が開いた講座がきっかけ。その時はバラを3輪作った。その後、地域の主婦たちで「まゆクラフト研究会」をつくり、学び合いながら腕を磨いた。アクセサリーなどは評判が良く、地元の観光施設で販売もしたという。
 「初めは繭をはぎることにものすごい抵抗感があった。自分で蚕を育て繭になるまでの苦労を身に染みて知っているから。せっかく糸になるものをなぜという気持ちだった」
 モチーフは当初の花から動物に移行している。美しさだけでは飽き足らず、変わったものをやりたいと思い、ヤマドリや鶴なども作っている。
 「作り始めるまでが大変。どんな形にするか、ああでもない、こうでもないと思案する時間が大半」
 手術後は1年に1作のペース。現在、今年の作品を構想中だ。

(わたらせ支局 本田定利)