館林紬 ニーズ探り品目豊富に 山岸 美恵さん(60) 館林市仲町 掲載日:2008/05/01
衣類や小物で紬の魅力をPRする山岸さん
県立つつじが岡公園内(館林市花山町)の売り場で館林紬(つむぎ)を使った衣類などを売る。店を開くのは1年のうちで「つつじまつり」期間中の4月中旬から5月中旬だけ。この1カ月は、お客の反応を確かめ、次の製品作りへのアイデアを吸収する貴重な時間だ。
「紬は夏涼しく、冬暖かい。1度買うと、ほとんどの人が2度、3度と来てくれる。紬の良さは着てみると分かるのだけれど、これを店頭で説明するのが難しい」。店で身に着けるのは上から下まで紬製品。歩く広告塔といったところだ。
紳士物や婦人物のシャツ、エプロン、作務衣(さむえ)、帽子やバッグ、ポーチなど、店先に並ぶ数10種類の商品はすべて自分でデザインし、生地の裁断まで担当する。「作業場であれこれと工夫しながら、アイデアを練っている時が1番楽しい」
今でこそ「大好きな仕事」と胸を張って言えるが「嫌で嫌で仕方がなかった時もあった」
20代で老舗の織元に嫁ぎ、初めて紬にかかわった。「当時は経(たて)糸を整える整経作業も自宅で行っていた。自分はボビンに糸を巻き付ける糸繰りなどを手伝った。何の覚悟もなく嫁入りし、現場に立つとは夢にも思わなかったので、初めてやった時は涙が出た」
嫁いでからしばらくして、反物の販売に陰りが出始めた。洋装が普及したためで、地元の織物組合は紬を使った2次製品作りを試みた。「和服以外に新しい使い方を提案し、生地の売り上げを伸ばそうという取り組みだった。洋裁ができたのでブラウスに挑戦した。お客のアイデアを形にするには、自分で工夫するのが1番。必死になってやっているうちに、品数が増え、ここまできた」
かつて一大産地といわれた同市だが、現在市内に残る織元はわずか。下職の専門業者も数が減り、業界をめぐる環境は年々厳しさを増す。それでも「まだ捨てたものじゃない」という。
「インターネットなどを見ると、若い人が着物に関心を持ち始めている様子が分かる。館林紬はは安価だし、手軽に扱える良さがある。必ず注目してもらえるはず」
宣伝方法に知恵を絞る毎日だ。