草木染 母の“色”今も鮮やかに 清水 佐千子さん(84) 渋川市渋川 掲載日:2008/01/04
母の指導で織った思い出の羽織を持つ清水さん
旧名久田村(現中之条町)の養蚕農家に生まれた。小学1年のころに父と働き手だった長兄が相次いで亡くなり、女手1つで奮闘する母を末っ子ながら手助けした。
「春、秋、冬の3度のお蚕では大人に負けないぐらい頑張った。母の仕事を見よう見まねで覚えていくなかで草木染に出合った。母は家で作った繭から布地を織り、身近な植物で染めて着物を作ってくれた。その時の鮮やかな色合いが、今でも記憶に残っている」
20歳の時に初めて織った羽織が今も自宅にある。母のアドバイスを受けながら一生懸命に機(はた)を動かしたという。
「母に教えてもらった草木染をどうしてもやりたいと思い、55歳の時、中学校の教師を退職して自宅の離れで始めた。子供の時に手ほどきを受けたから、思い出しながらやった」
当時は、自宅周辺に広大な梅林があるなど、いくらでも天然の染色素材が手に入った。
「母と同じようにクリをよく使った。クリは木の皮やイガ、葉、実の皮と全部使える。また、赤いチューリップから緑色が出るなど、1つずつ試しながら知識を蓄えた」
同時期に5年ほど高崎の教室へ通い、絵を入れる技術も学んだ。1985年に初めて県展に出品し、以来連続して入選、入賞となっている。昨年初めて最高賞も受賞した。
「絵を入れるのは骨の折れる作業で、型紙に絵を彫って布に当て、上からはけでのりを塗る。それから染料を使って少しずつ色を付けていく。思い通りの色が出たときは本当にうれしい」
孫の七五三や成人式の衣装も自分で染めてプレゼントした。
「60代の時に病気で入院し手術を受けたが、退院後、1週間もしないで制作を再開した。本当に好きで楽しくてやっている」
染めた色をはっきりとさせる媒染で、伊香保温泉の湯の花を使う「いかほろ染」を開発、95年に特許を取得した。地場産業として根付いてくれればと伊香保で指導したこともあり、現在も名物として販売されている。
「草木染は絹と相性が良く、すっと染み込むし仕上がりもいい。眺めて飽きがこない。地元の文化としてこれからも追求していきたい」