絹人往来

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繭クラフト 時間忘れ工夫に夢中 市川 理江さん(65) 安中市原市 掲載日:2008/02/22


「まゆクラフト作品展」の受賞作品を手にする市川さん
「まゆクラフト作品展」の受賞作品を手にする市川さん

 安中市原市公民館の繭クラフト教室の受講生(18人)の代表を務めている。受講生が共同制作した作品「初雪の詩(うた)」を、日本絹の里(高崎市金古町)主催の「まゆクラフト作品展2007」に出品、蚕糸振興会理事長賞に選ばれた。
 「ユリやバラの花を1人2、3本ずつ作り、大きなフラワーアレンジメントに仕上げた。創作を始めてから日が浅く、ほかに素晴らしい応募作品がたくさんあったので、まさか選ばれるとは思わなかった。受講生一同、とても感激している」
 新潟県南西部の新井市(現妙高市)の米農家に生まれた。養蚕もやっていたので、小さいころは桑の葉を摘む作業などを手伝った。
 高校卒業後、都内で就職。結婚を機に1968年、安中市内に移り住んだ。「地元の人が蚕のことを『お蚕様』と、『様』をつけて呼ぶのに驚いた」という。
 実家のある地域は稲作が中心で養蚕は副業。飼育も農具や機械を置く離れ小屋で行っていた。
 「母屋の2階で飼育するなど考えられなかった。桑の木も新潟に比べて大きく、よく手入れされていた。群馬の人が蚕を大切にしていることがわかった」
 子育てが終わり新たな趣味を探していたころ、繭クラフトに出合った。
 「日本絹の里で開かれた作品展を見て『これが本当に繭?』と思った。小さな繭玉からさまざまなものが作れることに驚かされた」
 もともと細かい作業が好きだったこともあり、繭クラフト作家の松下則子さん(伊勢崎市田中島町)が指導する、同公民館の講座に参加した。
 毎月2回、さまざまな色に染めた繭玉を切ってひな人形や五月人形、季節の花、えとの動物といった作品に取り組んでいる。
 「1つ1つ繭玉の大きさや形が違うので、部品をどう切り取るかが工夫のしどころ。作業中は夢中になり、1回2時間の講座があっという間に過ぎてしまうが、形になると達成感がある」
 「公民館に飾ってある作品を見た人が、関心を持ってくれるのがうれしい。地域に繭クラフトの文化を根付かせたい」

(安中支局 正田哲雄)