飼育体験 命はぐくむ苦労伝える 大河原 陽子さん(56) 沼田市奈良町 掲載日:2007/11/27
段ボール箱いっぱいの繭を抱える大河原さん
段ボール箱いっぱいに詰まった繭は、蚕の飼育体験をした昭和南小学校の努力の証しだ。今年6月から8月までの間、学校や家庭で毎日欠かさず桑をやり、大切に育ててきた。
「最初は子供たちに蚕を見せるだけでいいと思っていたのが、こんなにたくさん繭が取れるなんて思ってもみなかった」
教え子に蚕を知ってもらおうと、趣味で飼っている友人から数匹もらい受けるつもりだったが、100匹以上も贈られた。担任の1年のクラスと、2、4年の希望する児童20人が育てることになった。保護者や児童の中には、気持ちが悪いと飼育を断る人もいた。
「昔はお蚕様と大切に飼っていた生き物なのに、今では嫌われる。時代が変わったのだと思った。子供のころ、近所の養蚕農家で手伝いをしていたので、昔は身近だった養蚕を子供たちに伝えたいと思った」
各家庭に5匹ずつ配り、残りを学校で育てた。週末は自宅へ持ち帰り、面倒を見た。以前は養蚕業が盛んだった土地柄だけに、経験者が桑の葉の保存方法など飼育法や繭の利用法を教えてくれた。
「蚕が大きくなり、学校や自宅に生えている桑の木だけでは足りなくなった時、学校の近所の人たちが協力してくれた。心強かった」
順調に蚕がガに成長して、飼育箱には灰色の卵がたくさんでき、卵からの飼育にも挑戦することにした。
「幼い蚕を育てるのは初めての経験。新しい桑の葉をあげても、なかなか食べないので、つぶさないように慎重に指でつまんで葉の上に移した。手をかけた分、かわいかった」
はじめは、気味悪がっていた児童も、「かわいい」と飼育箱をのぞき始め、繭ができるまでの過程を手に取って観察するまでになった。
「子供たちは命あるものを育て上げる苦労を知り、生命の大切さを感じてくれたと思う。私にとっても勉強になった」
集まった繭を使いクラス全員で、来年のえと“ねずみ”の繭クラフト作りに挑戦する予定。
「せっかくの収穫を無駄にしたくない。活動を広げて、来年は保護者もクラフト作りが楽しめるようにしたい」