絹人往来

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着物の改良 「4つのやさしさ」重視 小林 芳枝さん(58)  桐生市境野町 掲載日:2008/11/25


「着物の魅力を伝えたい」と話す小林さん
「着物の魅力を伝えたい」と話す小林さん

 「もともと着物が大好きだったので、着物を着る人が少なくなる中、誰でも気軽に、簡単に着ることのできる着物を作りたかった」。太田市薮塚町で、着物の販売を手掛ける「ら・ふろーらる」を経営。今年で創業20周年を迎えた。
 着物に携わりながら、日本の伝統文化である着物の衰退を危惧(きぐ)する。というのも、かつて着物の着付けを教えていたが、「今は若い人たちが着物を着る機会はほとんどない。着付けを学んだ人も2年もすれば、みんな忘れてしまう」。そこで5年ほど前から「誰でも簡単に着られ、きれいに着用できる」をコンセプトに、既存の着物の改良に取り組んできた。
 試行錯誤の末、完成した着物は「四つのやさしさ」が特徴。着用の手順が簡単で「着ることが易しい」、低価格で「財布にやさしい」、締め付けが少なく「体に優しい」、収納が簡単で「手入れが易しい」をテーマに、着物の新しいデザインを考案した。
 「着物は若い人にとって価格、高齢者には着用の難しさがネックとなり、なかなか着る機会が少ない。夏は涼しく、冬は暖かいといった機能に優れた着物を着ることをあきらめてほしくない」
 母親が着物を日常的に着ていたこともあり、幼少のころから身近な存在だった。「初めて着物を作ってもらったのは18歳の時。当時はお嫁に行く前に何種類も買いそろえてもらうのが普通だった」と振り返る。
 高校卒業後、都内の会社に就職。通常の仕事をしながら、着物の着付けを本格的に勉強してきた。結婚を経て、化粧品や宝石を売る仕事を新たに始めた。高い販売実績を残し、その後独立。今は着物の販売が中心になった。
 現在の店舗ではインターネットでの販売にも取り組み、太田市内や県内をはじめ、全国各地から依頼が絶えない。「改良を考えて高価な着物を持ち込んでくるお客さまもいて、リピーターも多い」
 「シルクはあこがれ」と、絹で織られた着物には特別な思い入れがある。繭2800個を使って織られた無地の反物を好きな色に染め、着物にする商品を企画するなど思いを込める。今後も「精神的にキリッとさせてくれる」効果を持つ着物の普及に力を注いでいくつもりだ。

(太田支社 毒島正幸)