着付け教師 着物文化普及にも力 金井美由紀さん(53) 太田市岩瀬川町 掲載日:2007/05/31
短時間でマネキン人形に着付けする金井さん。自身でも洋服を着るのと変わらない時間で着られるという
ほぼ毎日、着物を着て生活している。自然と立ち居振る舞いも美しくなる。それが絹の着物だとさらにひと味違う。
「着物を着ると気持ちが引き締まり、洋服を着ている時よりも物腰が柔らかくなる。絹は格別で体にもなじむ。夏は涼しいし、冬は暖かい。そして何よりコーディネートが楽」
ハクビ京都きもの学院群馬校の太田ブロック長を務め、市内で着付けを教授している。現在、同ブロックには100人の会員が登録している。20代から80代まで、年代は幅広い。
「50歳を過ぎたら着物を着た生活を送りたい。そう思って教室に通い始めて今年で13年。講師になってからは10年近くが経過する。生徒に教えるために、養蚕や織り、染めなど一通り勉強をする。着物が仕上がるまでの手間暇を考えると粗末にできないと思う」
着付けを指導するだけではなく、着物文化の普及にも力を入れている。1998年、着付け教師の先輩、吉田千代美さんと「太田きもの愛好会」を立ち上げた。太田市役所内の和室を利用し、月に1回、ボランティアで着付けを指導している。市役所恒例のロビーコンサートにも参加し、十二単衣などの着物ショーを行っている。
着物姿で街を歩くと、声を掛けられることがある。老婦人から「私も昔は着ていたんだよ」と、思い出話に花が咲くことも。「すごくうれしくなる。着物が嫌いな人はいないんだなって思う」
着付け教室に通う若い生徒の多くは、たんすに入っていた祖母の着物を持ってくる。絹の着物は色あせせず、良い物ばかりだ。
「多世代にわたって使える着物はコミュニケーションを生む。母や祖母の存在をもり立てている気がする」
前橋市の農家に生まれた。養蚕も手掛けていたことを子供ながらに覚えている。
「子供のころは、繭をゆがくにおいが臭くて嫌だった。でも、今はそれが日本の文化なんだと、思えるようになった」
七五三、成人式、嫁入り…。着物を仕立てる時、子供にかける親の思いも一緒に縫い込まれている。そんな気がしてならないという。