ちりめん細工 創作は癒やしの時間 井上 和子さん(62) 渋川市伊香保町伊香保 掲載日:2008/10/07
ちりめん細工に囲まれた店内に座る井上さん
「小学生のころ、渋川駅から旧伊香保町にチンチン電車が走っていた。自宅から線路沿いに3分ほど歩くと町営の共同浴場があった。ちりめんを使ったあか擦りを持って行くのが毎晩の楽しみだった」
母が温泉旅館の女将(おかみ)や芸者の着物を縫う仕事をしていた関係で、子供時代には絹と縁の深い生活を送った。
現在は自宅を改装した喫茶店を経営し、店内には自作のちりめん細工を展示、シルク入りのうどんやシフォンケーキなどを提供している。
「身近すぎてかえって興味がわかず、ちりめん細工の創作活動を始めたのはほんの10年前。旅行先で知人が欲しがったちりめん細工の金魚が4000円もしたので、『それなら私が作ってあげる』と引き受けたのがきっかけだった」
いざ挑戦すると参考になる本もなく、悪戦苦闘した。
材料には母が愛用していた和服用コートの道みちゆき行をほぐして使った。仕事の合間を見ながら作業したが、約1カ月を費やした。
「大変だったけど、プレゼントした相手がとても喜んでくれたのでやりがいを感じるようになった。絹に触れている時間は自分もとても癒やされるので、ここまでやってこれたと思う」と振り返る。
一昨年、職場を退職してからは、毎日のように創作活動に時間を割いている。今年6月から7月にかけては高崎市金古町の県立日本絹の里で、伊香保名物の石段ひなまつりをイメージした6段のひな飾りを展示した。
「今は来年3月の石段ひなまつりに間に合うように、120個ほどのつるし雛(びな)を作っている。孫がまつりに参加を申し込んでいることもあり、記念となるような作品にしたい」
今後の目標として、ちりめん細工を持ってボランティアで老人ホームなどの施設を訪問する活動を挙げる。
「65歳で自分の人生に一区切りを付けたいと考えていたが、多少早めようかと思っている。知人から(活動への参加の)声を掛けられており、絹を通じて少しでも多くの人を癒やすことができたらうれしい」