着物販売 和の文化発信したい 菊池 妙子さん(57) 高崎市桧物町 掲載日:2008/11/15
「着物販売は感性の仕事」と語る菊池さん
2003年6月にオープンした高崎市の南銀座商店街にある「きもの彦太郎」の店長を任されている。通常の接客に加え、着付け教室や展示会の企画、京都への仕入れと忙しい日々を送る。
最近、店の着付け教室に2、30代の若い人が増えてうれしく思っている。「初めての人でも着物を着るとしぐさが制限され、大またで歩いたりすることもない。立つ動作一つとっても、ゆっくり立ち上がって帯を整えてから歩き出す。本来持っていた気付かない優美さが引き出される」と着物の魅力をあらためて実感する。
「着物販売は感性の仕事」が持論。趣味で美術展や芝居、コンサートに出掛けるなど、教養や美的感覚に磨きをかける。季節ごとの流行を的確にとらえたり、一流の品を仕入れるための人脈も重要。「着物文化を次の世代につなぐ使命感が持てる。誇りを持ってやれる」
前橋市出身。前橋女子高校卒業後、フランスに2年間語学留学した。帰国後に結婚し、専業主婦を続けてきたが9年前、自立の道を歩もうとデパートの呉服売り場に勤め始めた。
「母が普段から着物を着ていたのを見ていて、着物が日常にあった。フランスから帰って花嫁修業で着物に出合い、『何て素晴らしいものを持ってる国民なんだろう』と思った」
48歳で就職し、同僚から「若い人が入ってくれてうれしい」と歓迎された。「40代は育てがいのある年代と思われていた。この仕事はお客とのコミュニケーションが大事。値段が高いだけに『この人でなければ』と人間性も求められる。たくさんの喜びや苦しみを持ってる人が客の声を聴ける」
本県の絹文化の衰退を嘆いている。「群馬は昔、素晴らしい絹を生み出して外貨を稼いでいた。そういう文化があった県なのに、今は影が薄い。もっと絹を通して文化的なイメージアップができないか」と考える。
「失われつつある伝統工芸で頑張っている人たちの作品の発信地になりたい」と、着物以外に創作人形などの展示会も企画する。「普通の呉服店ではなく、和のカルチャーを伝える店を目指す」