小正月飾り 古里の伝統継承を 新井 豊さん(94) みどり市東町小夜戸 掲載日:2008/01/17
小正月飾りを前に「伝統継承が大事」と語る新井さん
養蚕の豊作を祈る、みどり市の指定重要無形民俗文化財「小夜戸の小正月飾り」は、今年も地元住民の手で作られ、高齢者生活福祉センター「まごころ」(同市東町花輪)の正面玄関に置かれた。「小正月飾り」の存続活動を中心となって推進している。
「終戦までは各家庭でやっていたが、戦後の混乱でやる家がまばらになり、養蚕が廃れてからは見かけなくなった。1990年、当時の東村老人会に『神様のことがおろそかになっている。昔のようにやるんべぇ』と呼び掛けた」
しめ縄作りから始め、翌年から「小正月飾り」に乗り出した。作り方を熟知しているため、手取り足取りで指導したという。
「子供のころに叔父さんが作っているのを見て覚えた。15歳の時には1人で作れるようになっていた。近所の家に配ると喜ばれてね。1軒で10組20本ほど必要なので大忙しだったよ」
「鍬(くわ)立て」の1月11日に山に入り、材料のナラ、ミズキ、シラハギなどを切りだす。12日に掻花(かきばな)、粥掻(かゆかき)棒、孕箸(はらみばし)などバラエティーに富んだ飾り物を製作。14日は約40人が集まり繭玉飾りを作る。
「繭玉は女性たちが米の粉でこね、私がピンク、黄色、草色に着色する。団子状に丸めてミズキの枝に挿す。昔はキラキラ光る小判もつるした。今は売っていないのでモチを平たくしている」
小豆粥に使う粥掻棒は皮をむいて先を4つ割りにして繭玉を挟む。繭玉がやわらかくなって粥の中に落ちるまで掻き回す。
「食べた後に孕箸をいろりにくべると、バチッバチッと音が立ち、護摩をたいているようだった。使った粥掻棒は門松の松と一緒に水口に置く。こうすると田に入る水が汚れない。昔の人のやることはムダがない」
1970年ごろまで春、夏、初秋、晩秋の年4回、蚕を育てた。
「集落で1番とれたこともあったよ。この周辺では水田は少なく昔から養蚕が収入の中心だった。外れるともう借金生活だった」
小正月飾りなど伝統行事の継承に今後も力を入れる考えだ。
「ふるさとの良さを残したい。今年はほとんど手を出さず、やってもらった。自分でやらないと覚えないからね」