絹人往来

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絹織物業 帯の技術で身近な品 萩原 守さん(57)  太田市原宿町 掲載日:2008/11/13


県産の絹を使い自分で織った作務衣を着る萩原さん
県産の絹を使い自分で織った作務衣を着る萩原さん

 「原宿工房」の屋号で織物工場を営む。「日常的に使ってもらえる絹織物、役に立つものを作ろう」と、染め物用の素材やストール、ショールなど、絹素材100%の織物を少量生産している。
 サラリーマンを経て30年前、父が創業した織物工場へ入った。
 「もともと和装に使う帯の反物を作っていた。経営を引き継いだ20年前はバブル景気が続いていて、とにかく売れた。京都の問屋が見本を見に来て、百本単位で注文していったこともあった」
 やがて注文が激減し、取引のあった流通業者も撤退していった。
 「今までと同じことを惰性でやっていたのではだめだと気付いた。少量でも長続きできる仕事をしよう思った」
 主に県産の繭を使い、染め物愛好者向けの生地など、帯の生産技術を生かした製品作りに取り組む。オーダーにも応じている。近年はフェイスタオルなどボディーケア用品も手掛ける。
 「30―40万円の帯は売れなくても、その十分の一ならば趣味に支出できるという人は多い。あい染めや草木染の素材に使いたいと、東北や関西から訪れる人もいる」
 家業を継ぐ前に勤めていた機械メーカーで、品質管理の重要性を学んだという。
 「世に出す製品は必ず試験織りと実験染めをして、お客さんに安心して売れる物かどうか確認する。基本的に面識のある人や紹介のある人にしか売らない。顔の見える商売をしていきたい」
 工房の近くを通る北関東道の伊勢崎―太田桐生インター間が今年3月に開通した際の記念品に、萩原さんが作ったシルクのハンカチが採用された。「地元のお祝い事に活用されてうれしい。ものづくりを続けていてよかったと思った」
 市外、県外で開かれる物産展へも積極的に出展する。「絹は素材の女王。碓氷製糸農業協同組合(安中市)など、もっと群馬のシルクをアピールすべきだ。関係者それぞれが自ら行動しないとこの産業は滅んでしまう」と危機感をあらわにする。「自分は絹屋。これからも絹100%でいくと腹を決めた。織物屋としてできる道を焦らず探っていきたい」

(太田支社 正田哲雄)