織物 自然相手に試行錯誤 芝崎 圭一さん(38) 伊勢崎市長沼町 掲載日:2008/03/22
「一緒に織物を支えてくれる若い人たちを探したい」と話す芝崎さん夫妻
「悩むことばかりだが、できるとこまでやりたい」
夫婦2人3脚で織物を製作している。糸の硬い部分を取り除く精練や、座繰り糸のけば立ちを抑えるのりつけ、柄をつける縛り、糸の順番を整える引込(ひっこみ)、染めなど、糸に関する一連の工程を圭一さんがこなし、妻の美佐子さん(36)は機織りを担当する。
圭一さんは、伊勢崎市内の会社に勤務していたが、父の重一さん(69)の病気をきっかけに6年前から織物に携わるようになった。重一さんは伊勢崎銘仙を扱う機屋だった。病気を患ったころ、特殊な糸で独自の着物を作り、販売しようとしていたところだった。
「父の商売は開花する寸前だった。迷いもあったが、伝統を残したいという気持ちもあって家業を継いだ」
織物の知識は何もなく、ゼロからのスタート。始めてみて感じたことは織物を支えている人たちの高齢化だった。
圭一さんと美佐子さんは「織物は年配の人たちが支えている。この現実を目の当たりにして、やらなければならないと思った」と口をそろえる。
伊勢崎の織物は分業。縛りや引込などの技術を持っている人たちを回り、3年ほどかけてすべての工程を覚えた。
「見たことはあったけれど、やったことはなかった。苦労ばかりで悩まない日はなかったが、いろいろ勉強していくうちに面白くなってきた」
それぞれの工程に基準はない。ただ糸に合わせて作業を進めていく。
「糸1本でも順番が違ったり、切れたりすると製品にならないから、丁寧に作業する必要がある。それに、糸はその日の気候に合わせて扱い方を変えなければならない。自然が相手だから、試行錯誤の繰り返し。うまくいったと感じることはあまりない」
毎日が苦労の連続だが、やりがいも感じている。「糸は扱いが大変だが、『いい生地だね、布に味があるね』と言ってもらえるとうれしいし、励みになる」と笑顔を見せる。
課題は若い世代の開拓。「今、織物に携わっているのは、年配の人たちがほとんど。織物を残していくためには若い世代の力が必要。一緒にやってくれる若い人を探したい」