伝道師 座繰り器の扱い指導 福田 友三郎さん(66) 高崎市菅谷町 掲載日:2007/06/05
上州座繰り器の扱い方を指導する
福田さん(左)
富岡製糸場世界遺産伝道師協会の伝道師。県の世界遺産キャンペーンのイベント会場などで上州座繰り器の扱い方の手本を示し、体験希望者に指導している。絹糸への理解を深めてもらおうと、年齢に応じて説明の仕方を工夫している。
「子供は皆、われ先にやりたがる。小学高学年ぐらいだと目を輝かせて作業に没頭する。そんな姿を見るとうれしくなる。」
実家は沼田市内の養蚕農家。食糧庁を定年退職後、時間の余裕ができ、希望して伝道師になった。歴史的価値の高い製糸場や、群馬、日本を支えた産業を次代に伝える重要性を感じたのが理由だ。自らを育ててくれた養蚕に恩返ししたいとの思いもあった。
昨年6月、県が伝道師を対象に開いた座繰り器の講習会に参加した。デモンストレーションを上手にできる人材の育成を目的に開かれ、2日間の日程で、繭を煮る方法から操糸(そうし)、揚げ返しまで一連の作業を専門家から学んだ。
「繭がつぶれず、糸がほぐれやすくなる湯温の調節が難しかった。均一な太さになるように手繰るのは感覚的な仕事。どの作業も奥が深い。人に見せる技を習得するのは容易じゃないけど、その分やりがいも大きい」
イオン高崎ショッピングセンターで5月末に行ったデモンストレーションが通算4回目。器具の扱いや技術指導に随分慣れ、約40人に体験してもらった。だが、大人が子供とは異なり進んで体験してくれないのが寂しいという。
「足は止めてはくれるが気恥ずかしいんだろう。体験すれば世界遺産登録への関心が強くなるはず。大人も子供も楽しんで参加できるような雰囲気づくりが必要だと思う」
協会の西毛県外支部が組織され、86人の伝道師を束ねる支部長に就任した。支部結成は、自治体や各種団体と連携したイベントの実施など協会活動を活性化するのが狙いで、その先頭に立つ。
「世界遺産登録は市民の意識が高まらないと成就しない。大勢の市民を巻き込んでいけるように、地域に根差した活動を展開していきたい」